ややや

頭の中身を取り出して虫干し

無題 (夢現話)

小高い丘の上に少女がひとり、立っていました。かがやくブロンドのおさげと、白いワンピースの裾を風になびかせながら、遠くを見ていました。空は青く、地はどこまでもあおあおとした緑で、それ以外のものは見えない不思議な場所でした。何を思うでもなくただ遠くを見ているとふと、丘を駆け上がってくる生き物がありました。


あっという間に彼女の目の前まで走って来たそれは、黒と白、それに少し茶が入った色の、毛のつやつやとした大きな犬でした。

あっ、と思うよりも前に、その犬は彼女のおさげをぱくっと咥え、むしゃむしゃと食べてしまいました。はらりとほどけた彼女の髪はやわらかな癖毛で、その姿は少女とも少年ともつかぬ姿に見えました。


おさげを食べた犬は、彼女に親しげに呼びかけました。犬は「この丘をおりて、知らないところへ行こう」と言いました。その時、彼女は自分が誰なのか、ここがどこなのか、いつから、なぜここにいるのか、何もわからないということに気づいたのでした。


犬は返事を待たずして彼女の前に伏せ、背中へ乗るよう促しました。彼女が犬にまたがり、そろそろとやわらかなお腹に腕を腕をまわし、しっかりと掴まった途端、犬はひといきに駆け出しました。


風をきってぐんぐん進む犬をひしと抱きしめながら、その体温と毛の感触を全身にかんじながら、彼女はふと「わたしがずっと望んでいたことは、これだったのだ」と心の底から感じました。


次に気がついた時、年老いた彼女の目に映ったのは、目の前で静かに眠る愛犬の姿でした。


おわり




(補足)

寝つけない時、何かキャラクターをひとつ構えて、それを動かしているとスッと眠れるとどこかで見て以来、たまにそれを試す。その時に出来た話を目覚めてから記憶が薄れないうちに書き残したものを清書したもの。

眠れない時というのは、あれこれと考え事をしてしまう時で、そんな時にキャラクターを動かすことに集中すれば眠れると言ったって、集中を遮ろうとする考え事をはねのけること自体がまず難しいことだなと思う。つまり、ある程度すんなり話が進んでいる時は半分意識が落ちかけていて、でもその次どうなる?を考えてはいるので、まさに夢現という状態だなと、起きてから振り返ると思う。話を考えている時は現9割程度に感じるが、振り返ると意外と夢現半々くらいなのだ。

というわけで、改めて読むと今の私の深層心理がぼんやり反映されているようなお話だと思う。これが夢日記の範疇なら辞めたいが、違うなら記憶があってそれなりに気に入ったものはぼちぼち記してみようという試み…。